
©2013 Warner Bros. Pictures
野球がもっと好きになる感動映画
ブライアン・ヘルゲランド監督による2013年のアメリカ映画「42」は野球と映画ファンにとっていまだに忘れられない名作だ。これはアフリカ系アメリカ人で史上初のメジャー・リーガーとなったブルックリン・ドジャース(現在はロサンゼルス)のジャッキー・ロビンソンを描いた伝記映画。当時公開わずか3日で初登場1位の収益を上げ、野球映画として史上最高のオープニング記録を作った。
まず俳優陣の素晴らしさに注目。特にジャッキー・ロビンソンを演じた主演チャドウィック・ボーズマンのカリスマ性に目が釘付けになる。ボーズマンは役のためにプロ野球コーチから5ヶ月も特訓を受け、その様子を自ら録画して本物のロビンソンと常に比べていたそうだ。さらにロビンソン夫人のレイチェルとも長く対談して、役に成り切るために忠実に癖などを研究した。まるであの頃の主人が戻ってきた感じがしたと夫人が感激したほどだった。ちなみに映画はロマンチックな夫妻の絆も描いているので、野球を知らない女性客も十分楽しめる。

©2013 Warner Bros. Pictures
白人社会から非難を浴びてもロビンソンを雇用したブルックリン・ドジャースのオーナー、ブランチ・リッキーを演じたハリソン・フォードもすごい。昔の記録からリッキーの体つきや声をリサーチして、ボイスコーチを雇いながら成り切ることに専念した。数多くの映画歴で自分自身が特に満足できる作品だそうだ。
フィラデルフィア・フィリーズの監督ベン・チャップマンを演じたアラン・テュディックも最高の悪役だった。彼が放った人種差別の暴言攻撃に、現代の白人観客の多くが言葉を失い、あの場面を見るのが苦痛だったと話す人もいた。選手時代はかなり花形だったチャップマンの変貌ぶりも信じ難いが事実だ。
そして怒りをこらえて顔色変えずに我慢したロビンソンが、一人階段下のトンネルに入ると、いきなりバットを折って泣き崩れるシーン。さらに後を追ってきたリッキーが話す、やり返さない勇気の教訓はかなりパワフルでこの映画の頂点ともいえる。後で明らかになる「なぜ僕に?」というロビンソンのリッキーへの質問、野球を愛するリッキーが多くの敵を作ってまでロビンソンを守ろうとした隠された秘密に心を打たれる。「You let me love baseball again」と話すリッキーは改めて偉大な人物だったと感じる。

©2013 Warner Bros. Pictures
初めはロビンソンを嫌がっていたチームメイトたちも、ブーイング、デッドボール、ケガ中でも忍耐強いロビンソンを見て、次第に差別心を捨てていく。一人ずつ、その静かな明るい変化も観る人の心を和ませる。映画はブルックリン・ドジャースがワールドシリーズに進出するまでを描く。
現在、背番号「42」はロビンソンを記念して、アメリカとカナダのメジャーリーグ全球団で唯一永久欠番で、今も毎年4月15日に彼の功績を称えて選手全員が背番号42をつけている。
あとがき:
そもそも第二次世界大戦が終わって生活が元に戻ったアメリカの暮らしは裕福だ。1947年には16の野球チームがあり、400人のメジャーリーグ選手がいたほど。そのうち399人は白人で、1人は黒人、それが背番号42のジャッキー・ロビンソンだった。
ロビンソンは自分の後に続く黒人選手のために、何をされても言われてもひたすら我慢して、殴られた頬の反対側を相手に突き出しながら孤独に耐えた。そしてこの「世界を変えた男」の影には、野球界の暗黙の規律を破ってまで孤立を選んだリッキーと、ファンから嫌われても彼に味方した白人チームメイト達がいた。
監督と俳優たちが一生懸命作って世界中の人々の心に残したこの偉大な歴史作品は永遠に不滅だ。

