映画『国宝』

©2025 VIFF
日本映画が最も光った瞬間
VIFFのが始まる前からこのポスターが注目を浴びていた。俳優の渡辺謙さんが鮮やかな赤色の着物を着た芸者2人の肩に手を置いている。だが英語の紹介を読むとこれは歌舞伎の話。これは綺麗な女形2人の男性だと気づくと映画が見たくなった。映画祭前に予定されていた2日上映が売り切れとなり、さらに1日追加がまた満席、そしてもう1日また売り切れで迎えた初日。初日公演かと思うぐらいの大入りだった。
『国宝』 (Kokuho)
李相日監督
「壮大な芸道映画」を書くために3年間も歌舞伎の楽屋に入った原作者の吉田修一さん。ストーリーは歌舞伎役者の家に引き取られた主人公・立花喜久雄(俳優・吉沢亮)の50年の記録を描く。ヤクザの抗争によって父(永瀬正敏)を亡くした喜久雄は美しい顔立ちをしていたため、有名な歌舞伎俳優(渡辺謙)に見そめられて歌舞伎の世界へ入る。血筋と才能、歓喜と絶望、信頼と裏切りの中で苦しみながら進んで行く主人公が、国の宝になるまでを描く。監督は『フラガール』で日本アカデミー賞の最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞を受賞した李相日監督。4代目中村鴈治郎さんが俳優として参加し、女形を演じる俳優陣の歌舞伎指導にあたった。喜久雄のライバル役に横浜流星、前代の人間国宝に田中泯など日本映画に欠かせない豪華俳優たちが結集する。
映画は約3時間。上映20分ぐらい前から女性化粧室は長蛇の列。だがこのドキュメンタリー風の展開を見逃してはならないと、途中誰も席を立たない。李相日監督はこの映画にかなりの情熱を注ぎ込んだのだろう。人間国宝になるために全てを犠牲にして、毎日観客に自分のベストを捧げる。こんな華やかで苦しい人生映画はまれに観る。
まず少年時代役の喜久雄(黒川想矢)の美しい演技にうっとり。そして会場から「あの俳優は誰?」という声が聞こえた迫真ある刀。何でもこなせる俳優•永瀬正敏は個人的にもっと見たかった。世界を背負う渡辺謙は安定していてごく自然。主役吉沢亮は顔も端正、動きも綺麗で主役にピッタリ。相手役の横浜流星は超ハンサムながら真面目にこなせる俳優。三浦貴大も嫌な役になりきっている。そして田中泯。年代が上なので彼のことはあまり知らなかったが、あの目で「あなた」と言い放つ彼は威厳があってまさに人間国宝だった。一つだけあつかましい批評を言わせていただくと、カナダ人には今回の女性陣の顔が混ざりやすい点と、安藤サクラ級の観客を引き込む存在感がもう少し欲しかった。
原作者の吉田修一さんの言葉通り、この映画は「100年に一本の壮大な芸道映画」だと感じた。上映後の長い拍手で観客賞候補に間違いない。撮影や製作も国際コラボが上手く噛み合っていて、アカデミー賞も気になるほど特別な日本映画。映画館に行ってこれまで観たことのなかった歌舞伎の世界に触れられて「才能」や「血筋」の葛藤について考えさせられる。おみやげたくさんもらえる映画はやはり素晴らしい。
PS: VIFF 2025年の観客賞受賞作品です。

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Media Screening Credits: VIFF 2025

