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インスパイアされる音楽家
『GIFT』の石橋英子さん
9月10日、独特の明るい雰囲気で日本から日加トゥディのインタビューに応えてくれた音楽家の石橋英子さん。10月1日にバンクーバー国際映画祭の今年の目玉であるライブ演奏『GIFT』で来加が予定されている。石橋さんといえば2021年の濱口竜介監督の『Drive My Car』を思い出す人が多いだろう。国内だけでなくカンヌやオスカー賞など世界で大絶賛を受けた監督のベスト作品。石橋さんが担当した良質なオリジナルサウンドトラックが背中を押したと言っても過言ではない。
映画と音楽について
「映画は子供の頃から好きで、音楽を聴く時間より映画を観る時間の方が長かった」と語る石橋さんだが、特に映画音楽にこだわった訳ではない。3、4週間で仕上げなければならない商業映画の音楽制作が多い中、コロナが発生。海外ロケを含む撮影が中断された時期で濱口監督とゆっくりと時間をかけられた。まず脚本や映像に目を通してイメージをわかせ、監督と話し合いをして作品への理解を深める。最初に信じて作ったものが完成するとイメージが違ったりする時もある。「時間をかけることが奥行きを生むのです」と石橋さんが微笑んだ。
新しいシンセサイザーを購入したら、石橋さんは毎日使いこなせるまで練習して何かを録音する。監督とのやり取りの間、その過去の積み重ねともいえる毎日の録音も聞き直したそうだ。自分で映像に合うと感じた音楽をまとめて濱口監督に送り、監督も送られてきた大きなデータから自ら音楽を選び出す。大物監督の要望に応えるのはかなりのプレッシャーだが、共存できるものを見つけられた。「濱口監督に出会えてラッキーだった」と振り返る。
多才な活動
映画音楽は映像より目立ってはいけないから、どこか地味な印象がある。だが彼女はリスボンの国際フィルム・アワーズで最優秀音楽賞を受賞したほどのミュージシャン。2018年のアルバム『The Dream My Bones Dream』 は国外の音楽誌でベストアルバムとして選出された。ある日田舎の地元で、道に捨てられていた電化製品を見た石橋さん。さびれて取り残された物が海に流れていくようなインスピレーションを受け、「そのイメージを意識して(2014年のアルバム「Car and freezer」の)曲を作りました」と話した。その後2019年のアニメ『無限の住人-IMMORTAL -』でも音楽を担当した。
肩書きを聞かれると自分でも首をかしげて難しいと感じるそうだ。映画や舞台、展覧会の音楽を担当する作曲家、ライブ演奏するシンガーソングライター、他のミュージシャンのプロデューサーであり、さらにピアノ、シンセサイザー、フルート、マリンバ、ドラムなど演奏者としても幅が広い。
そんな石橋さんがカナダで初めて魅せる『GIFT』では、サイレント映画に合わせてライブ演奏を行う。これは濱口監督の2023年作品『Evil Does Not Exist』からスピンオフした新たなコラボ企画で、ニューヨークでは「言葉で表せない」、ロンドンでも「他には類がない」とすでに国外で注目を浴びている。バンクーバーでの1日限りの貴重なライブなのでお見逃しなく。
VIFF Live
10月1日(火) Rio Theatre 7:00 PM
Published on Japan Canada Today for VIFF

