
かもめの旅立ち
8月29日、突然いつものボス(隣のビルの黄色いクチバシの白かもめ)がいなくなった。そういえば比較的大きな鳥達の姿も見えない。こういう時は地震か何かの前ぶれかとつい疑ってしまう。でも天気は良いし人間界はごく普通だ。
だが昼頃ボスに続いて大きめのダンナかもめが戻ってきた。ダンナは巣に入ってゴソゴソ。ボスは外でじっとしていた。そして2匹揃って一緒に飛行。何かいつもと様子が違う、変だ。他の小さい鳥たちはもっと束になって飛んでいたので、まさかボールドイーグル(タカ)?
翌日30日、原稿を書きながらふと隣のビルを見る。ボスの姿がまた見えないのでまた気になった。
ボスは珍しく夕方1匹で戻ってきた。いつもと違う場所に止まっていたので彼女の姿がよく見えた。
しばらくするとチョコレート色のカラスの大群(50匹ぐらいずつ)がやってきた。対するボス1匹で大丈夫かと不安になって窓を開けた。でもボスは何もしない。彼らが自分の巣に降りて何か食べているのを無視。たまに怒ったように羽を広げて威圧はしていたけれど。ボスの様子が落ち着いているので守る小鳥はそこにはいないと思った。
もしかしてボールドイーグルが食べた?でも先週飛ぶのが下手なかもめを見たので、ボスの小鳥は飛んでいるはず。もしかしてかえらなかった卵があったのかも。それをダンナが昨日あきらめさせた?
とにかくその光景は説明できない。私の推理からすると、以前カラスの小鳥を食べたボスがカラスの群れに、お詫びの印?に自分の巣の残り物を分けている。冬仕度のおすそ分け?そんな事は聞いた事がないけれど、他に考えられない。大群のカラスの横で動かないボスをまだじっと観察する。
そしてカラスの大群が行ってしまうと、ボスのダンナが戻ってきた。「あなた今までどこへ行ってたの?カラスの群れが来て大変だったのに」と愚痴をこぼしたかどうか知らないけれど、2匹は揃ってまた飛んだ。何度も何度も旋回した。
そして今日は8月31日。ボスの姿を探したけれど、やっぱりなかった。
かもめは一生1人のパートナーで、北のカナダで生まれて毎年同じ所に巣をつくる。冬の間はカリフォルニア辺りにいてダンナと一緒にまたカナダに戻ってくるはず。だから彼らの実家(隣のビル)はまだ取り壊さないでほしい。毎日何気なく見ていただけでも、ボスの見分けはできた。来年5月まで会えないと思うと少し寂しい。
『かもめのジョナサン』の作者はこういう普段の発見から本を書いたのかなと思った。
P.S. チョコレート色のカラス軍団、気持ち悪い鳥だったので窓を閉めたけれど、ここは海が近いから渡り鳥は間違いない。もしかしてタカかイーグル系だったのかも(気持ち悪さでいえばTurkey vultures?) もしかして他の鳥もダンナもみんな隠れてたのに、ボスは命を張って最後までそこにいたのかと考えると虚しい。降りてきたのは約50匹ぐらいずつだったけど群れは100匹以上いたから鳴き声も出さず抵抗できなかったのかも。大きな木でなくてコンクリートの屋上だから隠れることできない。考えたら茶色のカラスなんていないし私は無知だった。
でも専門家いわく、温暖化でカリフォルニアに帰らないかもめもいるって。そういえば冬にマクドナルドのゴミ捨て場にも出現する。もしかして近くにいる、また来るかもと考えよう。
9月1日の朝、ボスの鳴き声でバルコニーに出た。ボスは1人で戻ってきた。大きく2回旋回してバルコニーの手が届きそうな所まで来たけど全然怖くなかった。そして隣のビルのいつもの場所に泊まったけど、巣に背を向けて朝日の方を向いた。光がボスを包み込んでいたので、写真でいえば最高のシャッターチャンス。でもそんな事よりとにかく会えて良かった。
自然界の野性動物に目を向けると、気持ちが癒されるって本当だった。私ももう振り向かない。また来年ね、ありがとう。

