2024 IFFR Tiger Award: “Rei” by Tanaka Toshihiko

IFFR(ロッテルダム国際映画祭)の最高賞は将来が期待される新人監督に与えられるTiger Competition部門の最優秀作品賞Tiger Award。今年第53回(2024年)のトロフィーと賞金4万ユーロは監督俳優・田中稔彦の「莉の対(れいのつい)」が獲得した。
IFFRでは田中監督のインタビューがプレス報道された。
舞台は東京と北海道。自然の美しさと生身の人間が生きている様子が俳優のやりとりを通して映し出される。映画は夏、秋、冬、春の順番で構成。製作のスタートは監督2人だけだった。シナリオを3週間で書き上げてファーストシーンでは1人が撮影、田中監督は演じた。お金も企画も無く、企画書ができた時点で友達を集めて素人オーディション。さらに会社を立ち上げてファンディング。撮影に一年かかったそうだ。
「人と人が繋がる、そこには良い、悪いの側面がある。最後は観客の判断に任せるが、自分は出会うべくして出会ったと感じている」と田中監督は語った。監督自身も舞台の俳優。普段自分を応援してくれているファンが持っているリーフレットやチラシ、またいつもカメラを持つぐらい大の写真好きなので、写真も作品の中に入れたという。
「東京で孤独を感じる。だが1人で生きていける。でも1人で生きてはダメだ」。また「言葉が無くても伝わる。だが言葉は大事だ、でも言葉よりもっと大事なものがある」。そんな波のように行ったり来たりする感覚を映画にした。
「良い作品を作ればお客さんに良い評価をされる。作り続ければもっと喜ばれる。商業的というよりアート的な作品が自分にとって大事、だからアート的な映画を作りたい」と監督は力強く締め括った。
現役俳優の監督が俳優と一緒に俳優中心の作品を作り上げた。共感できるストーリー、美しいロケーション、自然な演技、監督のセンスの良さなどがロッテルダムの審査員から称賛された。「人間は常に外部からの脅威に脅かされている。それでも人は一緒に生きていく、素晴らしいテーマと構成」が今回の受賞に繋がった。カナダでの公開と次作も大いに期待したい。


