中島有二郎 Nakajima Yujiro

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Guitarist Yujiro Nakajima ©2015 maplepress.ca

 

夏風に爽やかなブラジル音楽  ギタリスト Yujiro Nakajima 中島有二郎さん 

カフェで流れているボサノバやサンバのブラジル音楽。ジャズのフュージョンともいえるような独特の音色で夏を涼しくしてくれる。毎年バンクーバーのジャズ・フェスティバルや夏祭りなどでおなじみの中島有二郎さんは、日本やカナダなど国際的に幅広く活躍しているプロのブラジリアン・ギタリスト。彼の奏でるアコースティックギターはとても繊細で聴き心地が良い。今回、ブラジリアンレストラン、Boteco Brasilで演奏スタンバイ中の中島さんに話を聞いた。

建築から音楽へ転向

「『ボサノバ』という言葉はすごく有名ですが、あれはリオで演奏されている音楽で、ブラジル音楽の中ではほんの一部です」と話す中島さん。天然ウェーブの髪や肌の色が一見ブラジル風を思わせる中島さんは長野県出身の日本人。クラシック音楽好きのお父さんの影響で兄弟全員ピアノを習わされたが、自分だけ途中でやめてサッカーに転向した。そんな中島さんが初めて音楽に興味を持ったのは、中学校時代に映画館でフィルム・コンサートとして観たビートルズだった。15歳でレコードを買い、独学でギターを始めた。高校時代のギター雑誌はハードロックやメタル系が主流だったが、17歳の時、野外コンサートで来日したジェフ・ベックに遭遇。このライブの衝撃について「ジェフ・ベックは即興で、しかもジャズ的な要素をロックの音で弾くんです」と興奮気味に語る。そして「当時音楽を演奏できるのは文化祭しかなかったでしょ?」と笑わせて「ディープパープルでも何でも弾くから一曲だけジェフ・ベックをやらせてくれ、と他のバンドメンバーに頼んだんです」と語った。

しかし「アートや音楽では食べていけない」と教えられた世代だったので、大学では建築学科を専攻し、部活としてジェフ・ベック風な音楽の作曲をした。大学卒業後も建築会社でなく、オーダー・メード・ギターの設計技師として働きながらギターを弾いた。ある日作曲家で指揮者の大森久雄氏に出会い、付き人になりプロの音楽家を意識するようになる。自分をアマチュアだと認めるぐらいプロとの技術の差を感じたので、ジャズギタリストの高嶋宏氏に師事してレッスンを重ねる。

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Yujiro with Liam MacDonald©2015 maplepress.ca

 

曲がり道の先は大好きなブラジル音楽

東京でジャズを中心としたプロ・ミュージシャンとしてキャリアをスタートした中島さん。『ハコバン』(注:生演奏のライブハウスやキャバレーなどに専属で演奏するバンド)として演奏を続け、ファンハウス社からプロとしてデビューする寸前までいった。しかし、流しで曲の合間に弾くボサノバなど、ブラジル音楽に癒された。それからは次第に独学でブラジル音楽を弾くのが楽しみになり、ジャズで成功していた日本を離れる決心をする。

35歳でカナダに移住し、遅咲きともいえるブラジル音楽転身だったが、ソロギター・フェスティバルで2年連続ブラジルギタリスト代表に選ばれ、ブラジリアン・パーカッションの第一人者であるLiam MacDonaldさんとのデュオでアルバムを発売した。現在バンクーバーでブラジル音楽を聴くならこのデュオで、といわれるぐらいの人気になった。

取材の日、Boteco Brasilは常連という感じのブラジル人の男性たち、座ったまま体を揺らして聴いている数組の夫婦、若い日本人女性のグループなど幅広い客層だった。彼らは7時のライブに合わせて予約を取っていた。雑誌を読んでいても友達と話していても邪魔にならずにスーッと溶け込むようなブラジル音楽。ぜひこの夏、生のライブを体験してほしい。

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